講義に当たった加藤医師も、かかりつけ医が簡単な眼科疾患を診ることには利点が多いと考えている。例えば、緑内障の初期は自覚症状がない。40歳以上の20人に1人が緑内障なのに、受診しているのはその1~2割というデータもある。「かかりつけの医師が緑内障を見つけてくれれば、眼科への早期受診につながり、もっと多くの人が失明や視野狭窄(きょうさく)になるのを遅らせることができる」と訴える。
こうした知識が求められるのは実は、地方に限らないようだ。東京の都心区から参加した病院勤務医(45)は「患者さんは、何十年も通っているお年寄りばかり。つえをついて病院に来て、買い物は宅配に頼っている。そういう人に眼科受診を勧めるのも難しい。できるところは診て、送るべきときに眼科医に送れる技術を身に付けたい」と話す。
冒頭の池ノ谷院長はセミナーを経て、患者の目を診ることに現実味がわいてきた。「器具も必要だし、もう少し勉強して準備を整えたい」と話している。