高齢者が、かかりつけ医に目や耳の症状を訴えるケースが目立つという。眼科や耳鼻科は内科の診療所に比べると数が少なく、足腰が弱ってきた高齢者には受診が困難になることもあるからだ。家庭医を育成する学会では、眼科や耳鼻科の知識を学んで初期治療を行い、必要なときに確実に専門医につなげよう、との取り組みが進んでいる。(佐藤好美)
栃木県益子町の「どこでもクリニック益子」の池ノ谷紘平院長は内科とリウマチ科を掲げる。だが、患者からしばしば、「先生、目も診てくれないか」と言われる。
町内には9カ所の医療機関があるが、眼科と耳鼻科はない。隣町の眼科まで車を使えば20分ほど。だが、車がないと1時間近くかかる。運転しない人や高齢者には負担になる道のりだ。
患者から聞かれるたびに、池ノ谷院長は「ごめんなさい」と断ってきた。専門治療が必要な状態と見分ける自信がないし、「視力が低下してきた」という訴えにも対応できない。