割安を印象付けるキャンペーンを実施した背景とは何か。寺尾氏は帰省時、同級生に会うとフィーチャーフォンのユーザーがまだまだ多いなかで、ワイモバイルの存在感がないことを改めて思い知らされたのだという。そうした自身の経験のみならず、市場調査を実施しても、認知度は「4人に1人、ワイモバイルの名前を知っている程度」(寺尾氏)だった。かつてのイー・モバイル、ウィルコムからワイモバイルへと生まれ変わって2年、いろいろとやってみたがまだまだだったと振り返る。
そこで強いインパクトを打ち出すために実施したのがワンキュッパ割。とはいえ、企業として持ち出しを増やしたのではない。これまでもMNP転入で1万円キャッシュバックなどを実施しており、その金額感は同等レベルにしつつ、「(1度の還元ではなく1カ月当たりと)横に倒しただけ」(寺尾氏)と見せ方を変えただけだという。
16年3月、ワイモバイルはアイフォーン5sの販売を開始した。13年の機種をあえて投入してきたことに、競合他社からは驚きの声も挙がった。
これに寺尾氏は「もともと出すか出さないか、という話はいろいろあったが、扱えるようになったので扱っただけ」と答える。とはいえ「2年も前のアイフォーンを出して(ユーザーがどう反応するか)正直自信はなかった」(寺尾氏)という。
寺尾氏が、アイフォーン5sの投入で唯一、獲得できるであろうと目算をつけていたのが“新高校生”となる層。アイフォーンを一つのブランドとして支持する10代と、懐具合をにらみつつ子供向けのスマートフォンを検討する保護者。そんな両者の綱引きに、割安な価格で提供する料金プランとアイフォーン5sはぴったりハマるという読みだ。これが当たり、この春、ワイモバイルは手薄だった学生ユーザーを数多く獲得した。これも前年より大きくスマートフォン販売数を伸ばした3~4月の実績に結びついた。