外来抗がん剤治療の広がりで、点滴治療は外来で受け、下痢止めや吐き気止めなどの薬は街の薬局でもらうケースが増えている。副作用のコントロールが必須なだけに、薬局薬剤師も患者の状態に鋭敏であることが求められる。だが、「院内でどんな治療をしたのか分からない」などの声も上がる。病院薬剤師と薬局薬剤師の「薬薬連携」は道半ばだ。(佐藤好美)
ある学会のワークショップでこの夏、病院薬剤師と薬局薬剤師らによる意思疎通の課題が話し合われた。関係者らが特に危機感を抱くのは、抗がん剤をめぐる連携。薬局の薬剤師からは、情報がないまま処方箋を受ける困惑が吐露された。
「下痢止めや吐き気止めの処方箋だけが、ぽんと来る。何のために出されたのかが分からないと、患者さんに説明ができない」
「経口抗がん剤の処方箋が来るが、どういうスケジュールで飲むよう指示されたのか分からない。患者さんに聞いていいのかどうかも迷う」
「患者さんには服用スケジュールが説明されたはずだが、理解されていない。休薬期間は服用を休んでもらわないといけないのに、『余った』『飲んでいいのか』などの相談がある。繰り返し説明した方がいいと思うが、手元に情報がない」
かつては入院で行うのが当たり前だった抗がん剤治療だが、今は外来治療が広がる。経口抗がん剤の開発も進み、経口薬や副作用防止薬は院外薬局で出ることも多い。