焼灼療法を多く手掛けている近畿大医学部付属病院(大阪府大阪狭山市)の消化器内科に転院。男性の腫瘍は横隔膜の近くにあり、超音波を伝えない空気を多く含む肺が邪魔をして病巣が見えなかったため、同病院では肺と肝臓の間に生理食塩水を入れてモニター画面に映しながら、病巣を完全に焼くことに成功した。
男性は6日後に退院。2年後の現在も再発しておらず「食欲が増え、腹部の違和感もなくなった」と元気に過ごしている。
同科の工藤正俊教授は、ラジオ波焼灼療法が普及した理由を「肝臓がんの治療では、肝臓の正常な機能をできるだけ残すことが重要で、その点から選択する病院が増えている。再発しても簡単にまた治療できる。装置や安全性を考慮した治療法の開発に加え、超音波検査では見えにくい患部の画像を鮮明にする技術の進歩も大きい」と指摘する。
工藤教授は、肝臓がんの周囲にある特定の細胞(クッパー細胞)に取り込まれる造影剤を使う方法を応用して、超音波画像では見えない肝臓がんを検出し治療する方法を開発。現在、世界中で使われている。このほか、超音波の画像とCT(コンピューター断層撮影)画像をオンラインで同時にモニターに映し、病巣の位置確認をしやすくする方法も広く普及している。