NHKを除くと、視聴者にとって無償となる地上波テレビ(CM対価という広告収入に頼るビジネスモデル)に慣れ親しんだ日本で、米国同様に「スポーツ中継」が視聴者獲得あるいはつなぎ止めのキラーコンテンツになるかというと、軽々には判断できないところがある。
しかし、これまでJリーグ戦の放映権を有し、看板コンテンツの一つとしていた衛星有料放送「スカパー!」(以下「スカパー」)では、昨年末からの1カ月間に約10万件の解約が発生したという。これはJリーグ戦の放映権の喪失が原因の一つとされている。同社の月額基本料金とサッカー・セットの月額料金の合計は3401円であったので、10万件の解約は年額約40億円の減収をもたらしたことになる。スカパーがJリーグに支払っていた放映権料は年額40億円と言われているから、損益計算上の痛手は軽微なものといえる。年額210億円(実際は165億円から始まり、逓増する方式)となるDAZNの提示した放映権料と張り合ってまで、Jリーグの放映権の維持を図るだけのインセンティブをスカパーは見い出しかねたのであろう。
しかし、視聴者から料金を徴収するビジネスモデルで同一の土俵に立つスカパーやケーブルテレビ局にとって、DAZNの挑戦の成否がもたらす影響は、成功の場合は特に甚大である。
広告料収入に頼るというビジネスモデルを続けている地上波テレビ局は「視聴率」という数字(マス)を追うため、万人受けする総花的な番組を作る。すなわち、どの局も「お笑い」「バラエティ」「(同様のストーリーの)ドラマ」といった似たり寄ったりの番組編成で競っている。果たして、このビジネスモデルがいつまで有効かというと、大いに疑問であり、その基盤とする番組はOTTにより簡単に崩される・代替されるものである。