米蒸留酒最大手のビーム社を、160億ドル(約1兆7千億円)という過去最大規模で買収することを決めたサントリーホールディングス(HD)。これにより、蒸留酒メーカーとして世界10位から3位に浮上する。だが、買収額は割高との指摘も多く、借り入れ増による財務基盤悪化の懸念も浮上している。にもかかわらず巨額を投じる決断を下した背景には、国内市場が縮小する中、世界的な“ビーム社争奪戦”には負けられないという覚悟があった。
世界で必要なブランド力
ビーム社は、バーボンウイスキーの「ジムビーム」や「メーカーズマーク」、スコッチウイスキーの「ラフロイグ」など、世界的に有名な蒸留酒の販売を手掛け、高いブランド力を持つ。サントリーとビーム社の蒸留酒事業の売上高を合わせると43憶ドルを超え、英ディアジオ社、仏ペルノ・リカール社に次ぐ世界第3位となる。
米蒸留酒市場で、ビーム社のシェアはディアジオ(26%)に次ぐ2位の19%。サントリーは今後も市場拡大が期待できる北米市場でのプレゼンス向上や販路獲得のほか、世界的なブランド力を生かしてアジアなど新興国に打って出る足がかりを獲得した。