ローカル線沿線で、日本酒の酒蔵を支えつつ沿線地域の活性化を図る活動が広がっている。JR御殿場線の神奈川県側の4酒蔵に着目した「足柄酒蔵の里大学」プロジェクト。沿線の異業種勉強会が立ち上げたもので、シンポジウムや酒蔵を巡るツアーを実施し、地酒と楽しめる食文化など地元の魅力の再発見に取り組んでいる。(寺田理恵)
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梅干し談議
丹沢と箱根の山々に囲まれた足柄平野(小田原市など)を走る御殿場線。沿線の「石井醸造」(大井町)は明治3年の創業。大正12年の関東大震災による焼失後に再建され、事務所部分はスカイブルーのモダンな洋風建築だ。
梅の名産地の曽我梅林に近く、代表銘柄は古い地名の曽我村にちなんだ「曽我の誉(ほまれ)」。主力の本醸造酒は通常の工程にもち米を使う仕込みを追加した「もち4段仕込み」でコクを出す、特色ある酒造りを行っている。9月に始まった同プロジェクトの講座の一環として、酒造りの場を訪ねる回の会場となり、石井孝典専務が「建て替える余力がなくて古いままですが、天井などに蔵付き酵母がすんでいます」などと案内する。