次のような奇想天外な論説が、定評あるリベラル紙ノーバヤ・ガゼータに掲載されたのにも驚かされた。
〈日本は「無条件降伏」した。つまり、現在の日本はかつての日本の継続ではなく、領土「返還」を要求する権利もない。国際法では、戦争状態によってあらゆる国家間の条約は効力を停止する。日露の国境を定めていた19世紀の条約も日露戦争によって抹消された〉
こうした暴論が流布されている限り、ロシアで北方領土交渉への理解が広がることはない。事実誤認に基づく報道・論説には厳重に抗議し、歴史の歪曲を許さない地道な取り組みが日本外交には求められる。北京で9月3日に行われる「抗日戦争勝利記念日」の行事にはプーチン氏が出席し、中露が歴史認識で“共闘”を狙っているだけになおさらである。(モスクワ支局 遠藤良介(えんどう・りょうすけ)/SANKEI EXPRESS)