「日本が降伏を拒否した後、同盟国の責務に忠実なわが国は極東での戦争に入った。ソ連軍は短期間で日本陸軍の強力な部隊を粉砕し、中国東北部と朝鮮は占領から解放された」。セルゲイ・ラブロフ外相(65)は国営ロシア新聞への寄稿でこう述べている。「同盟国の責務」とは米英ソがソ連の参戦を密約したヤルタ協定(45年2月)を指す。
北方領土占拠を正当化
現実にはしかし、日本がポツダム宣言受諾を通告した8月14日の時点で、満州(中国東北部)の重要都市は全く陥落していなかった。ソ連は日本降伏後に満州(中国東北部)や朝鮮半島、樺太での一方的侵攻を続けたのである。北方四島の占拠を完了したのは、実に降伏文書の署名よりも遅い9月5日のことだった。
ロシアは、ヤルタ協定を根拠に北方領土占拠の正当化を図り、異議に対しては、「日本は第二次大戦の結果を見直そうとしている」「歴史の歪曲(わいきょく)を図っている」と主張する。しかし、「歴史の歪曲」をしているのは、どちらなのであろうか。