【国際情勢分析】
8月、多くの日本人が真摯に歴史を振り返り、祖国の来し方行く末に思いを致す月である。しかし、わが国が8月15日に終戦を迎えた事実にすら目を閉ざし、「勝てば官軍」とばかりに身勝手な歴史観を振りまいているのがロシアである。ドミトリー・メドベージェフ首相(49)が北方領土・択捉島に乗り込んで日本側の反発を招いたが、こうした暴挙の根底にも歴史認識の問題がある。
この夏のロシアでは、米国による広島、長崎への原子爆弾投下を「犯罪」と糾弾する高官の発言や報道があふれた。米国は唯一の「非人道的な核使用国」であるとして自国の核保有を正当化し、さらには日米分断を図る意図がある。
ウラジーミル・プーチン大統領(62)に近いセルゲイ・ナルイシキン下院議長(60)は8月上旬、専門家を集めて原爆問題を討議する円卓会議を開催し、「人道に対する罪に時効はない」と米国を非難。アンドレイ・イサエフ下院副議長(50)もこの会議やメディアで、米国を裁く「国際法廷」を設けるべきだと提唱した。
半面、主要メディアは、ソ連による国際法違反であるシベリア抑留問題には触れていない。