「母乳の出にくい体質の人が増えている」。大阪市平野区に「のりみ母乳育児相談室」を開設して23年間、授乳中の女性のケアを続けてきた助産師、伊藤のりみさん(59)は最近、そう感じている。
昔も今も、母乳の分泌に自信が持てない「母乳不足感」に悩む母親は多いが、それとは違う。冷えがひどく、乳腺の発達が悪い。吸わせ方を指導し、頻繁な授乳をアドバイスする。食事を見直し、冷えがひどければはりや整体を勧め、授乳前に温めたり、肩甲骨を動かしたりすることを伝える。それでも分泌の増え方はゆっくりだ。
「完全に止まってしまう前に、早く見せてもらえれば対応できます。ただ、こうした体質になったのは、思春期頃から長年の積み重ねだと思うのです」
上がる初産年齢
母乳支援の現場で、多くの人が異変に気づいている。背景の一つには初産婦の高年齢化がある。国内68施設ある「赤ちゃんにやさしい病院(BFH)」の一つ、日本赤十字社医療センター(東京都渋谷区)では、24歳以下の初産婦の退院時母乳率は94%だが、45歳以上では50%。同病院周産母子・小児センター顧問の杉本充弘医師(66)は「個人差もあるが、高年齢になると基礎体力が落ちるのは確かだ」という。