自動車はユーザーの好みに応じて色を用意する。メーカーとしては、車体の造形に似合う色、特徴的なラインが引き立つような陰影などを考慮するだろう。ユーザーはいくつか用意された選択肢から好きな色を選ぶ。気に入った色がなければ、塗装工場に依頼して塗り替えてもいい。しかし、鉄道車両の色は好みというより、機能が重視される。「旅客案内」「誤乗防止」「ブランドの主張」などだ。
七色の塗り分けも「楽しさの演出」、すなわち「企業イメージアップ」という機能に含まれるといえる。「全ての色をそろえたい」という模型ファンのコレクション魂をくすぐるという理由は……どうだろう。模型メーカーにとってありがたい話ではある。
「安全のため」という理由もある。列車の接近を知らせるために、前面に白や黄色の帯を入れる。これは警戒色と呼ばれている。井の頭線の3000系が色つきのマスクをつけた理由は、銀色だけだと遠くから列車の姿を認識できないのではないか、という心配があったからかもしれない。
湘南新宿ラインと上野東京ラインが気になる
ところで、首都圏の鉄道路線の色で、気になることがある。湘南新宿ラインと上野東京ラインだ。東海道本線方面と、東北本線(宇都宮線)・高崎線に直通する電車は、どちらも同じ色。銀色の車体にオレンジと緑色のラインが入っている。ほぼ同じ経路を走っているとはいえ、東京駅に行こうと思ったら新宿経由だったり、その逆だったり。車体の色がアテにならない状況がある。