新電力や他の大手電力が入り乱れた競争に突入する電力小売り全面自由化に向けた関電の戦略は、火力に比べ発電コストの安い原発の再稼働があってこそだった。実際、今年1月には高浜3号機が再稼働、4号機も一度はトラブルで停止したが、再稼働に向けた準備を進めていた。
高浜3、4号機が動けば月100億円の火力燃料費が圧縮できるため、その分を原資に5月から電気料金を値下げする方針だった。大飯3、4号機などが再稼働すれば、さらに値下げする余地が増えて価格競争力をさらに強化。稼働原発ゼロ状態では、もともと総発電量に占める原発の比率が5割超と業界平均の3割程度より高かったことが経営を圧迫していたが、再稼働してしまえば強みになるはずだった。
平成28年3月期連結決算で5年ぶりの最終黒字を確保できる見込みも立った。5月からの電気料金の値下げを宣言して利用者をひきつけ、株主への復配や社員のボーナス復活も視野に入れるなど八木社長の“花道”を用意し、満を持して次期社長に引き継ぐ-。こんなシナリオを描いていた。