まぁ、こうするのは、マツダにお金がないからでもありますが。試行錯誤でこうした設備を使いこなしますが、たとえ失敗しても自分でただちに直せるので、稼働率が上がることはあっても下がることはないのです。
こうした運営をしていれば、すべて自前で進化させるので設備の経年劣化はありません。スカイアクティブが完成した秘密がここにもあるのです。
--そうは言っても、すべて自前にすると、それなりに経営資源も必要なのではありませんか。
自前主義で外部委託をしない分、開発などの要員の数は多くなります。これがネックではあります。しかし、同じ生産設備を、車種をまたいで使えるような工夫をすればよいのです。さらには、全車種に展開できる機能を検証して開発したり、車種を問わず顧客に受け入れられる機能や装備を工夫することで、無駄な開発はしなくてすみます。そうすれば、次の開発のための余裕が生まれます。
どんな最新技術も、手頃な価格でなければ受け入れられません。これを守った好例は、スカイアクティブのディーゼルエンジンです。性能を上げればコストも上がる、値段が上がる。これは許されません。最新技術の導入が価格上昇のいい訳にはなりえないのです。価格はお客さまが決めるものということを忘れてはなりません。とはいえ、これが意外と難しいのです。
(ジャーナリスト 宮本喜一=文 前定賢三=撮影)(PRESIDENT Online)