マツダの社内には以前から「ONE MAZDA」という考え方があります。つまり、全体最適、会社として最もよい判断をするという当たり前のことです。ところが、この“会社として”という考えが、部門間の厚い壁に阻まれてなかなか前進しない時期が続いていました。そうこうしているうちにリーマンショック。このショックによって、自分たちのこうした現実がより明確に見えてきたのです。自分たちの部門だけがよければそれでよし、というわけではない、製品が売れてはじめて、そのお金をもとに自分たちの次の製品が開発できるという現実です。
--生産部門と開発部門のスタッフが同じ建物に同居しているのに、お互いに口も聞かないことがあった、という話もお聞きました。
そんなこともありましたねぇ。でも、今は違いますよ。リーマンショックを機に、社内の空気は一変しました。まず、2009年の春、役員全員が結集して徹底したコストダウンの検討に没頭しました。現行のモデルをビス一本にまで分解して、各役員の責任領域、たとえば生産技術、購買などの立場から、コストダウンのアイデアを出す作業です。これは毎週1回、終日、ひとつのモデルについて行ないます。それを半年間ほど続けました。