食について何も知らない自分に愕然 スローフードを学んだ脇田まやさん (1/3ページ)

2016.8.14 06:00

畑のトマト(c)脇田まや
畑のトマト(c)脇田まや【拡大】

  • 仲間たちと夕食(c)脇田まや
  • 料理(c)脇田まや

 この5月、脇田まやさんはイタリアの食科学大学マスターコースを修了した。スローフード運動の拠点であるピエモンテ州ブラ市にある大学だ。学部で約300人、大学院でおよそ100人の学校規模である。

 「スローフード運動の一番の功績は何かといえば、希望と自信を失っていた、世界中の農家や生産者の精神的な支えになったことです」と脇田さんは語る。

 運動は1980年代後半にはじまった。イタリアに進出してきたマクドナルドに代表されるファーストフードに反旗を翻した社会運動だ。(1)生物多様性の維持 (2)地産地消 (3)食経験の社会的共有…という核となる3つの方針があるが、もとを辿ると政治的な匂いがかなり強い。大企業の言いなりになってはいけない、というメッセージもかなり時代がかっている。

 「高校を卒業してそのまま大学に来たような世代の子たちは、スローフードの古臭いところや極端なところには反発心があるんですよ。意図的に社会的弱者を想定して、その人たちを助けるって、ちょっと違うんじゃないかって」(脇田さん)

 人は農業に関わり、「自分たちの生存の根もとには何があるか?」という問いを発する。生物としての人間、社会的な存在としての人間、この両方の視点から問いかける。大きく言えば、それらに対する回答を求め、世界各地の農家や食に関わる家業の子供たちが多く、ブラの大学に学びにくる。

 その人たちが社会的な弱者と定義づけられるのに違和感をもつのも当然だが、一方で彼らは自分の故郷や家業に対して自信をもたせてくれたスローフード運動に感謝している、という点を脇田さんは指摘している。スローフードは都会の人たちのライフスタイルを変えただけではない。

 それでは脇田さん自身は、なぜこの大学に来たのだろう。

バリバリの都会っ子の脇田さんは、東京の大学を卒業してから都内の出版社に勤めた

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