食について何も知らない自分に愕然 スローフードを学んだ脇田まやさん (3/3ページ)

2016.8.14 06:00

畑のトマト(c)脇田まや
畑のトマト(c)脇田まや【拡大】

  • 仲間たちと夕食(c)脇田まや
  • 料理(c)脇田まや

 脇田さんは、こう答えてくれた。

 「確かにソーシャルデザインとは言ってませんね。だいたいスローフードには体系化された理論が、まだ確立されていないんですよ」

 つまり運動がデザインされていなかった。運動は推進することに意味がある。その当事者は、どこかの他人の理論を使うわけでも、世の中に流布したカテゴリー名を冠して戦略を考えるわけでもない。逆にそういうカテゴリーに属していることを殊更に謳う活動には嘘がある。スローフード協会がソーシャルデザインの範疇であると言わないのは、この理由かもしれない。

 また、スローフードがライフスタイルや商品開発に影響を与えたのは確かだが、それを自分たちの手柄として喧伝しない。イタリアでみれば、クラフトビールの隆盛もその一つのはずだが、「我々がブームの仕掛けの一端をつくった」とも語らない。

 「我々の活動はまだまだ不十分だ」と自らの尻を叩く。若い人たちが求める新しいスタイルのスローフードにも寛容な様子が窺える。これからの変化こそが、面白いかもしれない。きっと体系化は、第三者か次の世代の仕事であると考えているのだろう。

 さて、脇田さんのこれからだが、未定だ。今はバンカ・デル・ヴィーノ(ワイン銀行)という、スローフードの精神に賛同するワイナリーの協同組合で働きながら、今後の進路を探っている。食をメインとするのではなく、広い視野で食を一つのエレメントとしてみていく仕事が、彼女には相応しいのではないかとぼくは思っている。

(安西洋之)

【プロフィル】安西洋之(あんざい ひろゆき)

安西洋之(あんざい ひろゆき)上智大学文学部仏文科卒業。日本の自動車メーカーに勤務後、独立。ミラノ在住。ビジネスプランナーとしてデザインから文化論まで全方位で活動。現在、ローカリゼーションマップのビジネス化を図っている。著書に『世界の伸びる中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』 共著に『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか? 世界で売れる商品の異文化対応力』。ローカリゼーションマップのサイト(β版)フェイスブックのページ ブログ「さまざまなデザイン」 Twitterは@anzaih

ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解するためのアプローチ。ビジネス企画を前進させるための異文化の分かり方だが、異文化の対象は海外市場に限らず国内市場も含まれる。

  

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