日本の伝統の食をヨーロッパの人に提供したいとの動きは強い。寿司が定着すればするほど、日本の人の観点では「ナンチャッテ寿司」と表現するしかない日本人以外のつくる寿司が当たり前になってくる。そこで日本の人は寿司以降の料理を商売のネタにしようと頭を捻る。
「寿司以降」の一つが伝統の味だ。もちろん、文化的矜持という想いもある。味には5つある。甘味、酸味、塩味、苦味といった味に加え、うま味がある。うま味が日本料理の特徴であると言われ、うま味を表現するには昆布と鰹節の2つが大切な食材である。
だが鰹節はEUで輸入が認められていない。正確にいうなら日本の製法でつくられた鰹節は発がん性物質が発生する。これがEUの規制に抵触するとのEU側の説明である。
ヨーロッパで売られている鰹節は中国や韓国の商品がメインで、日本の料理人からすると味や香りが不十分だと不満だ。日本の鰹節メーカーがEU内に工場をつくりEU基準の鰹節を生産スタートもさせているが、市場の評価を判断するにはもう少し時間が必要だ。
先日、イタリアの若い人たちが設立した食アカデミーで実施されたワークショップを見学した。講師は京都の「吉兆」総料理長の徳岡邦夫氏だ。テーマは「うま味」である。EUに輸入できない鰹節を使わずに昆布だけでどのような出汁ができるか、との可能性を示すのが目的だった。