風景の番人としての決断 いつの時代でも変わらない至高の価値 (1/3ページ)

2014.12.14 05:30

プレス発表

プレス発表【拡大】

  • 中世の街を再生した本社のある丘
  • 工場解体後の風景
  • 現在の風景

 横浜みなとみらい21ができる前の1980年代の横浜。

 三菱重工横浜造船所や貨物線などが取り払われたら、新しい建造物をつくるのではなく、何もない公園にしたらどうかとの提案が市民の間にあった。次の世代が使い道を考えるための空き地としてとっておきたいとの思いである。

 当時の横浜市長との話し合いなどでも、そういう意見は出た。しかし計画通りに再開発は進み、結果はみなさんご存知の通りの風景になっている。

 ぼくも市長との話し合いに参加した市民の1人だった。プロジェクトにたいした貢献もできない若造ではあったが、「次世代が考えるスペース」とのコンセプトに賛同していた。夢は実現しなかったが、現在の風景を次の世代にどう繋げていくかとのテーマは、20数年間、ぼくの頭の片隅にずっと残っていたようだ。

 「ようだ」と推測で書くのは、このエピソードを先週、急に思い出したからだ。

 11月26日、ミラノのピッコロ・テアトロという劇場においてブルネッロ・クチネッリ氏がプレス発表した。本社近くの工場を解体して公園にするとの内容だ。詳しくいえば、本社のある丘から見える麓に他社の工場群が使用されないままになっているので、これらを視界から消去することにしたのである(画像を参照のこと)。

 丘上の崩れ落ちた中世の街、ソロメオを再生させ本社をおき、その周囲には劇場や学校などをつくってきたファッションブランドの創始者、ブルネッロ・クチネッリ氏。風景の番人としての決断だ。それも企業としてではなく、自身の家族で運営する財団が主体である。

年間売上400億円以上の規模としては中堅企業であるが…

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