例えば、昨年12月にトヨタ自動車が世界で初めて量産販売した燃料電池自動車(FCV)。二酸化炭素(CO2)を発生せず空気も汚さない“究極のエコカー”とされる。2002年12月に同社がリース販売を開始しており、当時の首相だった小泉純一郎氏が首相官邸に納車されるなど、政府お墨付きの次世代自動車の最有力候補として普及が期待されていた。
だが、爆発しやすい水素を取り扱う厳しい安全規制が普及への足かせとなった。日本では高圧水素を取り扱うFCVや水素スタンドに関して、経産省の高圧ガス保安法、国土交通省の道路運送車両法など多くの法律で規制されていたためだ。
一方、欧米では普及に向け制度面で柔軟な対応をとったことで、「ドイツでは水素ステーションのインフラ整備が日本より2、3年は進んでいる」(業界関係者)という。
安倍晋三政権下の13年になって、ようやくFCV普及に向けた水素容器規制の抜本的見直しが行われることになったが、経産省の関係者は「もっと柔軟な規制緩和を実施していれば、FCVの本格導入を早められたはずだ」と唇をかみしめる。