■【日曜経済講座】編集委員・田村秀男
先週半ばまで、中国の春節「爆買い」ツアーは、世界の主要都市を席巻した。
チャイナマネー・パワーの源泉は人民元の現預金にある。その総額は昨年末で20兆ドル強(約2400兆円)で、実に日本の3倍、米国の1・7倍。増殖速度もすごい。年間で2兆ドル(約240兆円)増えている。日本の8倍、米国の3倍だ。発券銀行の中国人民銀行がおカネを1増発すると、現預金は5以上増える。
人民銀行を支配する中国共産党の打ち出の小槌(こづち)。可能にするのは米国を中心とし、欧州も日本もどっぷり漬かる国際金融システムである。
2008年9月の「リーマン・ショック」後、米連邦準備制度理事会(FRB)は昨年末までにドル資金発行残高を4倍に増やしたが、人民銀行はドルに見合う元を増発した。人民銀行は中国に流入するドルを自ら決めた交換レートで全面的に買い上げて、相当額の元資金を発行する。ワシントンは元安には厳しく反応するが、人為的な外為操作は見て見ぬふりだ。元の量が増える金融緩和効果で中国市場が拡大することは、本国市場で苦戦するビッグ3など米企業にとっても利益になる。