消費税導入でインフレの加速を懸念する声も上がるが、財務省では影響は一時的だと説明する。同省のイルワン次官は「現在は約2%のインフレ率が3.5~3.8%に上昇するだろう。しかし、消費税の浸透とともに1年ほどで物価も落ち着きを取り戻す」と述べ、むしろインフレ率が低い現在こそ導入の好機だと強調した。
同国は燃料補助金などで歳出がかさみ、債務残高は国内総生産(GDP)の55%にまで膨らんでいる。政府は消費税導入や補助金削減で財政再建を図りたい考えだが、思惑通りに進むかどうかは不透明な情勢だ。
野党指導者のアンワル元副首相は、新興国では先進国よりも消費税の逆進性が強まると主張。「低・中所得層の負担ばかりが大きくなる」として導入は時期尚早との見解を示した。
また、50万人の構成員を擁する同国最大の労組マレーシア労働組合会議も「都市部では生活必需品ですら価格が上昇を続けており、消費税導入で物価上昇が加速するのは明らかだ」として、政府に即時撤回を求める声明を発表した。
政府はコメなどを課税対象からはずすとともに、低所得者を対象にした現金給付などの緩衝措置を設けて乗り切る方針だが、今後も相当な反発が予想されており、ナジブ政権にとってはかじ取りの難しい局面が続きそうだ。(シンガポール支局)