米国は、この原子力空母(ニミッツ級)を10隻運用している。空母数で比べれば中国(1隻運用、2隻建造中)はもちろん、フランス(1隻)、英国(1隻建造中)などをしのぐ圧倒的な海上戦力だが、信じがたいことに過去には「用済み」の烙印を押されかねない危機もあった。
核の時代
第二次大戦前の海軍の主役は、巨砲を積んだ戦艦だったが、日本海軍の真珠湾攻撃や、日本の陸上爆撃機が戦闘航行中の英最新戦艦「プリンス・オブ・ウエールズ」など2隻を撃沈したマレー沖海戦によって大艦巨砲主義の時代は終わり、航空機と空母が主力の時代を迎えた。ところが第二次大戦が終わるとともに、核兵器の時代が始まる。
核兵器をどれだけ速く有効に使えるかが軍の価値となり、米国では空母どころか海上戦力全てが無用との論まで現れた。速さ600キロメートルの爆撃機で核爆弾を世界の果てまで運び落とせるというのに、せいぜい速度30ノット(約55キロメートル)の船で何ができるのか、という議論だ。