北朝鮮が4回目の「核実験」を行った6日以降、実験もさることながら、鴨緑江の向こう側の動きが気になる。鴨緑江は中国との国境に流れる川で、「向こう側」は7個の中国軍最大部隊単位、というか軍閥に近い《軍区》で最精強を誇る《瀋陽軍区》の管轄域。注視すべきは北京より平壌と親しい瀋陽軍区によるクーデターである。瀋陽軍区高官の一族らは、北朝鮮に埋蔵されるレアメタルの採掘権を相当数保有する。瀋陽軍区が密輸支援する武器+食糧+生活必需品や脱北者摘発の見返りだ。北朝鮮軍の軍事パレードで登場するミサイルや戦車の一部も瀋陽軍区が貸している、と観る関係者もいる。もっと恐ろしい「持ちつ持たれつ」関係は核・ミサイル製造だ。中国軍の核管理は《成都軍区》が担い瀋陽軍区ではない。瀋陽軍区は核武装して、北京に対し権限強化を謀りたいが、北京が警戒し許さぬ。そこで製造技術を北に流し「自前」の核戦力を造ろうとしているとの観測が浮上してくる。
しかも、その核戦力は日米ばかりか北京にも照準を合わせている可能性がある。理由はこうだ。(1)北核実験を受け、北京が対北経済制裁に踏み切れば、瀋陽軍区はクーデターを考える(2)他軍区の通常戦力では鎮圧できず、北京は成都軍区の核戦力で威嚇し恭順させる他ない(3)瀋陽軍区としては核戦力さえ握れば成都軍区の核戦力を封じ、瀋陽軍区の権限強化要求+クーデターの、2つの選択肢を保てる。習近平指導部が進める軍の大改編は、現代戦への適合も視野に入れるが、瀋陽軍区を解体しなければ北朝鮮に直接影響力を行使できないだけでなく、瀋陽軍区に寝首をかかれるからでもある。