「お客さまの中には、ワインやシャンパンで京料理を楽しみたいという方もおられます。ので、カツオ節とコンブのだしだけでなくさまざまな食材からだしをひいて対応しています」
ハクサイ、小カブラ…
そうした工夫からワインに合う献立として創りあげたのが、冬の会席の1品「ハクサイのスッポン仕立て」。
寒さとともに甘味を増すハクサイを、スッポンのスープでじっくりと炊き、味のアクセントにタラの白子の素揚げをのせたハクサイが主役の京料理。鍋の蓋を取った瞬間に立ちのぼるショウガの香りに、いただく前から体がぬくもる。
一方、丹後のグジと小カブラという“であいもの”を、あえて「カブラ蒸し」にせず、汁仕立てにしたのが「丹後グジと小カブラのカブラ汁」。
銅のおろし金ですり下ろした小カブラの汁で小カブラを炊き、グジのアラでとったスープに一番だしを合わせる。濃厚さを増した小カブラと、ほろほろと崩れるグジの身が椀(わん)の中で、一体となり、小さく四角に切ったユズのほんのりとした苦味が味わいを深める。