【京都うまいものめぐり】
京都駅からJR奈良線で約25分、宇治市にある「黄檗(おうばく)」駅から東へ数分歩くと、異国情緒あふれる黄檗宗大本山萬福寺の朱塗りの総門が見えてくる。その門の内、塔頭寺院「天真院」の境内に「銀杏(いちょう)庵」はある。天真院の娘として生まれた姉妹が1973(昭和48)年、黄檗宗の僧であった父に学んだ中国式の精進料理「普茶(ふちゃ)料理」を供する店として開いた。旬を大切に、工夫が凝らされた野菜づくしの献立は、遠来のベジタリアンをも魅了する。
「これが最初にお出しする『笋羹(しゅんかん)』です。味付けをした16種の野菜料理のオードブルになります」
ひと抱えもある大皿を前にそう話すのは、姉で接客担当の黒田東暉子(ときこ)さん(72)。皿の上には、鮮やかなピンク色が目をひくミョウガずしや、ひすい色のトウガンの含め煮、菊の花をかたどったユリネなどとクリの渋皮煮、ユズ釜などが季節の彩りを競う。