豆腐とすり下ろしたゴボウなどを混ぜ合わせ、ノリにすりつけて油で揚げ、蒲焼き風のタレをつけた、もどき料理の真骨頂。見た目も味も、まさに「うなぎの蒲焼き」だ=2015年10月16日、京都府宇治市(志儀駒貴撮影)【拡大】
中国僧が伝えた精進料理
「普茶」とは、普(あまね)く衆人に茶を施すの意。普茶料理は法事や仏事の終了後、僧侶や檀家(だんか)が一堂に会した茶礼に出された中国僧の精進の供応料理。江戸時代初期に中国から来朝し、京都・宇治に黄檗宗大本山萬福寺を開山した隠元禅師が伝えたという。
貴賤の隔たりなく、4人1卓で大皿・大碗に盛られた料理を各人が小皿にとりわけいただくが、葛や植物油を多用する調理法が特徴。その来歴から萬福寺をはじめ塔頭寺院、門前の専門店など、黄檗の地には普茶料理と出合える場所は多い。
そうしたなか、銀杏庵では「胡麻豆腐」や「うなぎの蒲焼き風」「雲片(うんぺん)」といった伝統的な献立と、現代の志向にマッチした「野菜サラダ」などを取り入れた15品のコースを組み、女性の人気を集めている。
普茶料理の代表的な献立である「胡麻豆腐」は、煎って油が出るまですりつぶした白ゴマとコンブだし、吉野葛、酒でつくる。早朝から仕込み、火にかけたら一気に練り上げる。口に入れると、ねっとりとした舌ざわりの奥に酒の香りがほのかに立ち、箸でつまみあげても崩れない軟らかさが絶妙。