【京都うまいものめぐり】
≪「主役」の京野菜にこだわって≫
古くから酒蔵の町として知られる伏見。うまい酒のあるところには、うまい料理が求められる。「京料理 清和荘」は1957年、都市の喧噪(けんそう)から離れ、くつろぎを提供する料亭として生まれた。荘厳な門構え、数寄屋造りの客室、一幅の絵のように四季折々の自然を写す庭など、日本の料亭の伝統の設(しつら)えを受け継ぎながら、献立の主役に京野菜の料理を据える。そのこだわりに、この地で客をもてなす主人の心ばえがのぞく。
「奇をてらわず、しんみりおいしいもんを食べていただきたいんです。うちの料理で、ほっこりしてもらえたら、それがいちばんやと思うてます」
そう話す3代目主人、竹中徹男さん(52)が、この地ならではの“素材”として一番にあげたのが、敷地内からわき出す「清和の井」の伏水(ふくすい)。伏水とは、日本酒の仕込みに用いる伏見周辺の伏流水のこと。竹中さんが目指す、しんみりとしたおいしさを生み出す、だしの要だ。
その伏水を使いこなすことで、コンブやカツオ節、干しシイタケ、煎り大豆、グジ(甘ダイ)やフグのアラ、カニの丸ガラ、スッポンなどから最高のだしがひけるという。