景気回復で基盤固め
また、安倍首相は今後の政権運営に関しては、周囲にこう強調している。
「これからは池田勇人元首相路線でいく」
これは、1960年の日米安全保障条約改定と引き換えに退陣した祖父、岸信介(のぶすけ)元首相の跡を襲った池田氏が、「寛容と忍耐」を掲げて低姿勢で経済重視の政策を進めたことを意識した言葉だ。谷垣幹事長も安倍首相に、岸氏だけでなく池田氏の役割も果たすよう進言していたという。
安保関連法案は、海洋へと膨張する中国や、核・ミサイル開発に余念がない北朝鮮の脅威など、日本をめぐる厳しい国際環境をみると必要最低限の備えだが、国民には人気が低い。
第1次内閣当時にやり残した「宿題」であるこの問題を乗り越えたなら、「道半ば」(安倍首相)のアベノミクスを仕上げて、景気回復の実感を全国に届け、さらに政権基盤を固めたいとの狙いがある。
自身が正しいと信じること、やりたいことばかりをしていても国民はついてこないし、物事を為(な)すには回り道も必要だ。これは短命に終わった第1次内閣の経験に学んだ教訓だ。