その川原さんが腕によりをかけた前菜の盛り合わせ「什錦●(=手へんに餅のつくり)盆」は、意表を突く見事な“アート”。鷹が巣の中で羽根を広げて卵を抱く様子を、食材を使って巧みに創作した立体作品だ。まず鷹の胴体は鶏肉のささみをボイルして作り、クチバシは赤トウガラシ、目はグリンピース、アイラインはシイタケで表現。大きく広げた羽根には厚さ1~2ミリに切りそろえたシイタケや鴨ロース、イカやタコの蒲鉾、ふかした鶏卵を並べた。鷹が抱く卵はしょうゆ味の鶉(うずら)卵、巣は細切りしたジャガイモに片栗粉をつけて揚げた。
作品を壊して食べるのが勿体ない逸品で、「結婚式や誕生日、卒業式などの記念日に注文されることが多く、サプライズ(驚き)を楽しんでもらえる」(川原さん)そうだ。
短冊状のキュウリが「中和」
「雲白肉」はほどよく脂身の載った豚バラ肉を薄切りにして蒸籠(せいろ)で蒸し、八角、桂皮などの香辛料とみじん切りのニンニク、しょうゆ、砂糖を合わせたタレと、自家製ラー油をかけた。皿の中央には約15センチの短冊状に切り水にさらしたキュウリをこんもりと盛り上げている。豚肉二、三枚とキュウリを一緒に口に含むと、ピリ辛味が舌の上に広がりキュウリがその辛さを中和してくれる。辛くてもなぜか箸が進む魔法のメニューだ。