自民党の同じ町村派に所属しながら、そりが合わないとされてきた福田康夫元首相(78)も習主席と2度にわたり会談し、環境整備を進めた。首相が外交手腕を買う岸田文雄外相(57)も地ならしに努め、習主席との間合いを詰めていった。
一連の交渉でも中国側は一方的に前提条件を提示し、交渉の主導権を握ろうとしたが、最終的な局面を迎えると、日本が強く出る場面もあった。
ホストのメンツ保つ
政府高官によると、日中の合意文書の作成過程で中国側は首相が靖国神社に参拝しないと盛り込むことにこだわった。これに対し、日本側が「首脳会談を見送っても構わない」との意向を伝えたところ、逆に中国が折れてきたという。首脳会談を中国側の事情で見送れば、APECホスト国としての資質が問われかねないという事情が習主席側にはあったためだ。
菅義偉(すが・よしひで)官房長官(65)は10日の記者会見で「日中間の関係を改善するための大きな前進があった」と首脳会談の実現を歓迎した。ただ、歴史問題や尖閣諸島など懸案は山積しており、本格的な関係改善の道筋は不透明なままだ。(峯匡孝、北京 阿比留瑠比/SANKEI EXPRESS)