【アートクルーズ】
実に画期的な展覧会だ。いや、展覧会というのは正しい言い方ではない。これはもっとはるかに複雑きわまる試みなのだ。その仕掛けを解きほぐすことから始めてみたい。
会場には20人からなる作家の作品が並んでいる。一見しては普通のグループ展に見えなくもない。しかし、来場者はすぐに作品の脇に、小型のモニターが添えられているのに気付くだろう。映し出されているのは、展示されたアーティストのインタビュー画像である。が、なぜだろう。映っているのもあれば、映っていないのもある。実はこれらの映像は、会場の奥にしつらえられた特設スタジオへと会期中に各アーティストを順次招き、その様子を公開のライブでインターネット中継し、終了すると、その翌日から順番に公開されていく仕組みなのだ。
宇川直宏の試み
つまり、展覧会のかたちをとっているけれども、これは静的な展示と動的な配信に加え、アーティスト自身の肉声を伝える記録作り(アーカイブ化)を同時進行させるという、いまだ例のない試みなのである。