【アートクルーズ】
フランスに帰化した藤田嗣治(つぐはる、1886~1968年)の晩年の作品を集めた「フジタ、夢をみる手」が、24日から「ポーラ ミュージアム アネックス」(東京都中央区銀座)で始まる。都内では未公開だった作品2点を含む約40点を展示。藤田が空想によって描いた神話や宗教、少女や幼児といったテーマにスポットを当てる。
癒えることなき心
都内で初公開される作品は、「グロテスク」(1955年)と「シレーヌ」(52年)。
「グロテスク」には、22人の人物が描かれているが、愛らしい、または美しい姿はない。どれもこれも猜疑心やあざけり、欲望や企みに満ちた醜い表情だ。背景も崩れ落ちた城砦と夜の暗い空のようで、不気味さを感じる。
シレーヌとは、ギリシャ神話に出てくる海の怪物。美声で歌って船乗りの心を狂わせ、船を難破させる。ぼうぼうに伸びた髪、美しいが、どこかシレーヌ2人の表情には死の影も漂う。