【アートクルーズ】
ともに話す、ともに食べる、手紙を書く、花を贈る…。日常のささやかな営みを通して、他人、そして世界にまでつながろうとする参加型の展覧会「リー・ミンウェイとその関係展」が、森美術館(東京都港区六本木)で開かれている。凶悪犯罪のはびこる現代社会。とかく縮んでしまいがちな「人間を信じる心」「他人に関わろうとする勇気」を取り戻せそう-そんな気持ちにさせるプロジェクトが盛り込まれている。
突然、花を贈る
取材を終え、美術館のあるビルの下に降りると、青空の中に赤い東京タワーがくっきりとそびえていた。その景色を眺めているらしい女性に声をかけた。「すみません。お願いがあるんです」
女性は振り返り、ちょっと驚いた様子だったが、「この花もらってくれませんか」と私が差し出したオレンジ色のガーベラを受け取って、「うれしい」と笑みを浮かべた。