【アートクルーズ】
たいへん画期的な展覧会であると思う。しかしその画期性はやや入り組んでいる。順を追って読み解いていこう。
「純粋」からの逸脱
まず本展は、文学館というやや特殊な施設で開かれている。が、十分に美術展として成立しているのだ。文学館なら当然、文学にまつわる企画が中心となるから、「見る」というよりは「読む」展示物が多くなりがちだ。しかし本展は違っている。圧倒的に「見る」ものが多い。その質量は通常の美術展と比べて遜色ないばかりか、かえって刺激的でさえある。
なぜ、このようなことが起きたのだろうか。いうまでもなくそれは、SFというジャンルが、発表の形式としては純然たる文学であるにもかかわらず、図を描いて楽しむ、もしくは思い浮かべて楽しむ要素を重んじた「空想科学小説」であることに多くを負っている。つまり、いまSFで展覧会をやろうとすれば、おのずと文学展ではなく美術展とならざるをえないのだ。それくらいSFの世界は「読む」こと以上に「夢見る」楽しみで溢(あふ)れている。