美術界でも同じことが
その意味で、先に挙げた筒井が会場の入り口で本展のために寄せた言葉は注目に値する。「ここに名誉ある展覧会を、他でもない全国的な、そして文学的な信望を得ている世田谷文学館に於(お)いて開催していただけることは、第一世代の生き残りの一人としての私の、まるで今やっとSFが文学史に組み込まれたかのようにも感じられる、大きな喜びです」「今は亡き先人たちに対して、『ひとり勝ち』という耳もとの囁(ささや)きから逃れられず、内心忸怩(じくじ)たる思いを捨てきれなかった私の胸を幾分なりとも軽くして下さったことに感謝しなければなりません」
ややへりくだった印象がなきにしもあらずで、筒井独特の毒を感じないでもないが、おおむねは心の声に従うものだろう。なにより彼の感謝は、自身の文学が純文学へと桁上げされたことよりも、SFそのものが純文学を呑(の)み込み、昔の仲間もろとも、ようやくしかるべき居場所を得たことに注がれている。