【アートクルーズ】
土田世紀というマンガ家を知っているだろうか?
「俺節」や「編集王」「同じ月を見ている」など、才気あふれる作品を次々と世に送り出しながらも、2012年、43歳という若さで早逝(そうせい)した天才作家。25年の間に描かれたマンガ原稿は約2万ページに上るが、その膨大な作品群は、作風の変化によって、3期に分けられる。
作風で3期に分類
デビュー作「未成年」が描かれたとき、土田はまだ17歳だった。異様な完成度と同時に、若さゆえのほとばしる熱量をも併せ持ったこの作品は、同世代の作家たちを嫉妬させたという。初期作品の登場人物の多くは、作家同様10代の男子。彼らの、自己完結的であるがゆえにやり場のない青春の猛(たけ)りが、大胆かつ繊細な筆致で描かれる。演歌歌手を目指す東北の青年を主人公にした泥臭い青春歌「俺節」は、この時期の代表作にして、マンガ史に残る傑作である。
1990年代、それらの作品で、目の肥えたマンガファンに注目された土田は、人気作家になってゆく。ボクサーくずれの直情型熱血青年を主人公に、マンガ業界の裏側を戯画的に描いた「編集王」や、競馬の世界をリアルかつ滑稽に活写した「競馬狂走伝ありゃ馬こりゃ馬」などがこの時期の代表作だ。