【アートクルーズ】
「現代美術のハードコア(核心)はじつは世界の宝である」。こんな刺激的な題名がついた現代美術のコレクション展が、東京国立近代美術館(東京都千代田区)で開かれ、話題を呼んでいる。展示作品は、台湾のコレクターが好みで集め、ともに暮らしている、数億~数十億円もする“お宝”ばかり。最近、世界的に発言権を増しているコレクターたちの、美術界に与えつつある影響まで考えさせる内容になっている。
さまざまな斬新テーマ
台湾のヤゲオ財団が所有する美術品は約400点。そのうち74点が出品されているが、ほとんどが初来日だ。
作家は、アンディ・ウォーホル、ロイ・リキテンスタイン、フランシス・ベーコン、ゲルハルト・リヒター、サイ・トゥオンブリー、杉本博司、ザオ・ウーキーらで、現代美術好きなら知らない人はいない著名作家が並ぶ。どれもこれもオークションでは「億円」を下らない。
例えば、スーパーリアリズムで知られる彫刻家、ロン・ミュエクの「若者」。黒人の若い男性を生きているように、リアルに表現する。しかし、めくり上げた白いシャツの下には、やりで刺されたような傷。傷の位置や形は、キリストの磔刑(たっけい)画を思わせる。