【アートクルーズ】
日本ではあまり知られていなかった19世紀末~20世紀初頭の画家フェリックス・ヴァロットン(1865~1925年)の回顧展が、国内では初めて、6月14日から三菱一号館美術館(東京都千代田区丸の内)で開かれる。作品に表れている批判性や疎外感。現代にも通じる感性や画風が、100年の時を超えて再評価されている。
真っ黒な自分
「貞節なシュザンヌ」を見てほしい。ソファに座った男2人と女性が、何やらひそひそ話をしている。女性のなまめかしい目つきや男たちのはげた頭の光沢がリアルだ。題名をそのままうのみにする読者はほとんどいないだろう。
「赤い絨毯(じゅうたん)に横たわる裸婦」は、女性の美しい背中を描いたヌード。には違いないが、女性の顔だけがこちらを向き、じっとまなざしを投げかける。読者が男性なら、「え、誘惑してるの?」、女性なら「いやらしい!」。そんな気持ちになっても不思議はない。