寓話や宗教画
晩年に描いた作品は、「ラ・フォンテーヌ頌」(49年)など寓話に関する作品や、「シレーヌ」など神話による作品、ノートルダム・ド・ラ・ペ礼拝堂の壁画をはじめとする宗教画、そして少女、幼児たちの絵。「グロテスク」は、ボスやブリューゲルのように、人の醜い罪を描き表した、広い意味での宗教画を思わせる。
少女では、聖母像のように描いたり、果物などを配して装飾的に描いたり。このころの藤田は、イマジネーションと自分の記憶の引き出しを精いっぱい使って表現した。展覧会では、子供のいなかった藤田が、自分の子を慈しむように描いた幼児たちの絵30点もまとめて展示する。
島本学芸員は、「藤田の人生と重ね合わせ、晩年を傷心による『現実逃避』と解釈する人も多いが、空想やイマジネーションを膨らませることで新たな世界を生み出した1つの“実りある画業”だったと位置づけてもいいのではないか」と新たな解釈を提案している。(原圭介(SANKEI EXPRESS)