【アートクルーズ】
あるときは偽札づくり容疑の被告、あるときは芥川賞作家、あるときはパロディー漫画家…。つねに世間をあっと言わせる“芸術”を発信して注目されてきた赤瀬川原平氏(1937年~)。その活動50年を振り返る展覧会が、12月にかけて町田市民文学館ことばらんど(東京都町田市)と、千葉市美術館(千葉市中央区)で開催中、開催予定だ。切り口は異なるが、両展とも“前衛の巨人”ともいうべき赤瀬川氏の多彩な世界を網羅する回顧展となっている。
反対をやること
芥川賞を受賞した尾辻克彦名の小説「父が消えた」の中に、こんな場面が出てくる。八王子市にある父親の墓へ行く列車の中で、同行した雑誌社の男性と話すシーンだ。習慣で三鷹駅から東京駅方向に乗ることが多い列車は、小説では反対の八王子駅方向に向かっている。
「やっぱり反対はいいね」私は同行の馬場君にいってみた。(中略)「そうだ。反対運動だねこれは。反対運動は旅行だね。たとえばね、えーと、たとえばね、自分の家の便所に行くのにね、廊下を行かずに天井裏をはって行く」「うわ、また、先生のは極端ですよ」=馬場君=(中略)「芸術だねぇ、それをやれば」