赤瀬川氏の「旅行」そして「芸術」は「反対をやること」。そういえば、空き缶の内側にラベルをはり直して宇宙を包み込んだ「宇宙の缶詰」、手書きで“千円札”を作品にした「復讐の形態学(殺す前に相手をよく見る)」、役に立たない階段を超芸術とみなした「トマソン黙示録真空の踊り場・四谷階段」、老いをポジティブに見つめ直した「老人力」など、いつも常識と反対のことをしている。
そして、私たち鑑賞者も、反対のことを知らされることで、いつもと違った“景色”をみる「旅行」に参加できた。
小説家としての赤瀬川氏について町田市民文学館ことばらんどの谷口朋子学芸員は、「尾辻克彦も、表現者の赤瀬川が内包する人格の1つ」としたうえで、才能として「物を解体するような」「空想も現実のように描く」高い描写力を挙げる。
別分野に移り住む
開催中の「尾辻克彦×赤瀬川原平」展は、約250点を展示。うち約200点を赤瀬川家から借用した。愛猫家で知られる氏の猫の置物コレクションや愛用のカメラなど普通の展覧会では見られない物も並ぶ。また図録には、「父が消えた」で同行したとされる雑誌社の「馬場君」こと作家の関川夏央氏が寄稿している。