きっかけは経理部員の情熱
そもそも今回の異色のタッグは平成20年、豊田通商の経理部に所属していた若手社員が「近大マグロ」を特集したテレビ番組をみたのがきっかけだった。
人工ふ化した稚魚を成魚に育てて、その成魚から採卵、さらに人口ふ化させて次の世代を生み出すサイクルのため天然のクロマグロの個体数には影響しない。クロマグロの養殖モノも多いが、通常の養殖は天然のクロマグロの幼魚を海洋で捕獲し、いけすで太らせる方式のため幼魚の乱獲を招きかねない。
この社員は「クロマグロの完全養殖は有望だ」と直感した。新規事業として立ち上げるため社内人事育成制度のひとつ「イノベーションリーダー育成塾」に応募し、東京から近大水産研究所を訪ね「一緒にやりませんか」と持ちかけた。もちろん経理部の名刺を持った若手社員の商談は相手にされなかったが、何度も訪ねるうちに熱意が通じた。