近畿大学と豊田通商がクロマグロの稚魚量産化を始めるのに続き、ニホンウナギの稚魚量産化に向けた産学官の取り組みが今秋にも本格化する。2010年に世界で初めてニホンウナギの完全養殖に成功した独立行政法人水産総合研究センター(横浜市西区)などが、水産庁の委託を受け稚魚(シラスウナギ)の大量生産システムの開発に乗り出す。静岡で民間企業数社と実証実験を開始。3年後に養殖業者などへの技術移転を目指す。
規制条約の対象危惧
ニホンウナギの完全養殖は、人工的に産卵、孵化(ふか)させた稚魚を成魚に育て、再び産卵、孵化させるもの。天然稚魚を飼育池で成魚まで育てる方法しかないこれまでのウナギの養殖とは異なり、安定的にウナギが生産できる画期的な技術だ。量産化に成功すれば、天然稚魚の漁獲量減少を背景に高騰しているウナギの販売価格引き下げにもつながる。
日本鰻輸入組合(東京都千代田区)によると、国内で流通する約半数がニホンウナギと推定される。うち99%が養殖ウナギで、同組合の森山喬司理事長は「ワシントン条約で規制の対象になれば自由な取引ができなくなり、影響は大きい」と話す。