電気のない時代、明かりを灯す機能製品としてのロウソクが、「火は危ない」との理由で使用禁止になることはなかったはずだ。電気に不自由しない時代になってロウソクは心を癒すモノとなった。
同時に、火は危険なのでより扱いに注意しないといけない対象にもなった。実際、多くの場所でたき火は禁止されている。
しかし、心を和ませてくれる火が、これほどに邪魔者扱いされ駆逐されることに危惧を抱かなくて良いのだろうか。停電の時、スマホのアプリで明かりをとれるといっても、充電のできない時にスマホ自体を使えない。ロウソクを使うしかない。
日本のロウソク市場が伸び悩む背景には、いくつかの問題が潜んでいる。その一つに「危険なものには一律に蓋をせよ」との考えが、社会品質管理のごとくいきわたり過ぎている、ということがある。
グレーゾーンを許す文化的な傾向がありながらも、ある特定のことには「大量工業製品」に求める品質を期待してしまう。
日本のロウソク市場の伸び悩みには、文化的な弱さがそのまま出ているような気がする。(安西洋之)
【プロフィル】安西洋之(あんざい ひろゆき)
上智大学文学部仏文科卒業。日本の自動車メーカーに勤務後、独立。ミラノ在住。ビジネスプランナーとしてデザインから文化論まで全方位で活動。現在、ローカリゼーションマップのビジネス化を図っている。著書に『デザインの次に来るもの』『世界の伸びる中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』 共著に『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか? 世界で売れる商品の異文化対応力』。ローカリゼーションマップのサイト(β版)とフェイスブックのページ ブログ「さまざまなデザイン」 Twitterは@anzaih
ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解するためのアプローチ。ビジネス企画を前進させるための異文化の分かり方だが、異文化の対象は海外市場に限らず国内市場も含まれる。