22年間、一度もモデルチェンジすることなく生産を続け、「走るシーラカンス」と呼ばれたクルマがあった。三菱が1964~86年に販売した最上級セダン「デボネア」だ。トヨタ「クラウン」や日産「セドリック」に対抗するため、持てる技術を結集した自信作だった。
英語で「礼儀正しい」を意味する「デボネア」という名も風変わりだが、目を引くのはその独特のスタイル。ボンネットとテール部の両端にエッジを立て、巨大なフロントグリルとL型テールライト、ロケットランプを持つ。GMデザイナーのハンス・ブレッツナー氏の手腕で、60年代アメリカ車をそのままコンパクトにしたようだ。室内は広く、高級感あふれる6人乗り。シートはソファのように分厚い。
だが、デボネアは売れなかった。ライバルよりも高い価格や脆弱(ぜいじゃく)な販売網が響いた。モデルチェンジは先送りされ、三菱グループの重役専用車として、細々と生きることになる。