モデルSは販売直後の13年に、相次いで火災事故を発生させた。さらに今年5月、米国で自動運転システム「オートパイロット」を作動中に、初めての死亡事故を起こした。「(火災の原因となる)電池の破損を防ぐよう、電池ボックスの下の鋼板を強固にした。また、自動運転モードのソフトを9月に刷新した」(同)と説明する。
これに対し日産のリーフは10年12月に発売し、今年8月までに世界累計で23万台以上を販売した。「リーフは一度も火災事故が起きていない」(日産幹部)という。世耕弘成経済産業相は「(環境や安全など)次世代自動車の開発が遅れると国の根幹にかかわる。戦略や取り組みを誤ってはいけない」と語る。
日米EVメーカーの販売動向は、電池など日本の部品メーカーにも影響を与えていく。自動車の環境規制が世界的に強化されていくなか、両社のマーケティング戦略が注目される。
【プロフィル】永井隆
ながい・たかし ジャーナリスト。明大卒。東京タイムズ記者を経て1992年からフリー。著書は「サントリー対キリン」「人事と出世の方程式」など多数。58歳。群馬県出身。