経営再建が頓挫し危機が再燃したシャープ。リーマン・ショック後の円高時代にはパナソニックも同じく巨額赤字を計上したが、プラズマテレビ撤退などの構造改革を進め、「脱家電」によるBtoB(企業間取引)シフトで業績の“V字回復”を成し遂げた。関西の家電業界をリードしてきた両社はなぜ明暗が分かれたのか。そこには主力事業のリストラ判断、将来性への投資、経営者のタイプなどの違いが浮き彫りになってくる。(藤原直樹)
液晶皮肉な結果に
「液晶をとるとシャープではなくなる。経営が成り立たなくなり、新中期経営計画の達成も不可能だ」
5月14日、都内で新中期経営計画を発表したシャープの高橋興三社長は何度もこう強調し、主力の液晶事業の分社化による切り離しや売却を否定した。
シャープが再び危機に沈んだ発端は、スマートフォン向け中小型液晶が昨秋から中国市場で急激に販売が減ったことだ。液晶パネルは継続的な大規模投資が必要になる一方で、需要変動の影響を受けやすいため浮き沈みが激しい。
新たに計2千億円を資本支援する主要取引銀行のみずほ銀行と三菱東京UFJ銀行は、液晶事業の売却を視野に入れた分社化を求めたが、高橋社長が拒否。最後まで液晶にこだわる姿勢を貫いた。