【通信大競争 30年攻防の行方】(9)
NTT民営化後の30年でわが国のICT(情報通信技術)市場は大きく発展し、世界に類を見ない光ファイバー網やモバイルブロードバンド(高速大容量)など先進的な通信環境を実現した。しかし、ICTの利活用では立ち遅れが目立ち、サービスや製品開発力の国際競争力は危機的状況ともいえる。連載では、通信自由化後に競争を導入し、事業を立ち上げた当事者の取材を通じて苦闘や課題を探ってきた。民営化されたNTT、巨大企業に成長したKDDI、インターネット事業に先鞭(せんべん)をつけたインターネットイニシアティブ(IIJ)の経営トップにそれぞれの通信自由化を聞いた。
□鵜浦博夫・NTT社長
■市場の変化に対応できた
--NTT分社以来、最大の機能再編となる光サービス卸が曲折の末にスタートした
「10年以上、NTTも総務省も光回線が通信サービスのメーンという発想だった。一言でいうと、メーンプレーヤーが光回線を使うお手伝いに徹するということだ。産業界に化学反応を起こす触媒役を担う」
--規制会社から規制の緩い会社への事業シフトになる
「NTT東西地域会社は規制でモバイル事業がやれない。NTTドコモの競争力が低下するなかで、ドコモだけ固定・携帯の一体サービスができないのはおかしい。光サービス卸によってドコモのシームレス(つなぎ目のない)サービスに道を開いた」